口腔漢方とは
当院では口内炎・歯周・口臭・口の渇き・舌痛・味覚異常などお口でお悩みの方に漢方薬を処方しております。
なぜ漢方が口腔内に良いのか?
体の免疫が落ちていれば体の一部である口腔内にも当然症状が表れます。現代の歯科治療は外側から治療することばかり考えています。漢方では体の免疫力を高めることを同時に行うことで口腔疾患によい影響を与えることに注目しています。
日本口腔内科学研究会 参照
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当院では口内炎・歯周・口臭・口の渇き・舌痛・味覚異常などお口でお悩みの方に漢方薬を処方しております。
体の免疫が落ちていれば体の一部である口腔内にも当然症状が表れます。現代の歯科治療は外側から治療することばかり考えています。漢方では体の免疫力を高めることを同時に行うことで口腔疾患によい影響を与えることに注目しています。
日本口腔内科学研究会 参照
新たに漢方薬4種類が「薬価基準による歯科関係薬剤点数表」に収載され、平成30年4月1日現在、合計11種類の漢方薬が歯科適応となりました。11種類の漢方薬とは、立効散(歯牙痛、抜歯後の疼痛、歯齦炎など)、半夏瀉心湯(口内炎)、黄連湯(口内炎)、茵蔯蒿湯(口内炎)、五苓散(口渇)、白虎加人参湯(口渇)、排膿散及湯(歯槽膿漏、歯齦炎)、葛根湯(上半身の神経痛)、芍薬甘草湯(急激に起こる筋肉の痙攣を伴う疼痛、筋肉・関節痛)、補中益気湯(病後の体力補強)、十全大補湯(病後の体力低下)です。
本項では、これらの11種類の漢方薬を中心に、漢方薬について解説します。
漢方薬とはどのようなものなのでしょうか。ここにその特徴をいくつかあげたいと思います。
漢方薬には複数の効果をもつ生薬が複数配合されています。したがって多方面に効果があります。具体的には血液循環の改善、炎症の抑制、体力増強、免疫調整、自律神経機能調整などの機序により、心身全体の調子を整え、複合的に病気を治療するという戦略をとっています。
処方は診断名に対して行われるのではなく、患者の体質、疾患の憎悪因子(寒冷、湿気、疲労など)、臨床症状の違いによっていくつかのタイプに分類したうえで行われます。たとえば白虎加人参湯は、赤ら顔、目の充血、口中の熱感、口臭、口渇、便秘などの症状を目標に処方されます。これらの症状を呈する患者さんは、舌質の色が紅色で、舌苔は黄色であることが特徴です。以上の臨床症状があれば、診断名によらず、白虎加人参湯を処方候補として検討します。実際に口内炎や口腔乾燥症、三叉神経痛、糖尿病などに処方されています。
たとえば、前項2)に示した白虎加人参湯―身体の熱をさます薬―適応の体質の患者に、身体を温める漢方薬を処方したら、症状はむしろ憎悪してしまいます。このように体質に合わせた処方が必要です。
また、漢方薬を構成している生薬にも副作用があります。例として、白虎人参加湯に含まれている人参には血液上昇やのぼせ、不眠などがあり、甘草はむくみ、体重増加、低カリウム血症などがあります。漢方薬の処方を誤らないこと、構成している生薬についても効能と副作用の知識をもつことが大切です。
それでは、「歯科関係薬剤点数表」に収載されている漢方薬について解説します。
抜歯後の疼痛、歯痛に効果があります。また、口腔顎顔面領域の慢性疼痛に有効な場合があります。鎮痛作用は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に比べて弱く、特に難抜歯後の鎮痛効果は期待できないと考えます。一方で、NSAIDsによる胃腸障害が懸念される場合や、薬物誘発発生喘息(アスピリン喘息)によりNSAIDsやアセトアミノフェンの使用ができない場合に処方を検討します。立効散は、防風、細辛、升麻、竜胆、甘草の5種類の生薬から構成されています。このうち、防風・細辛が温性で、疼痛や腫脹を発散し、升麻・竜胆が寒性で熱をさまし炎症を緩和します。全体として寒熱のバランスがとれた鎮痛薬となっていますので、体質を考慮せずに使用ができます。また、細辛には局所麻酔作用がありますので、歯痛や粘膜の痛みに対しては、口腔内にしばらく含んで服用すれば、鎮痛効果が得られます。
胃腸の働きを良くして、食欲不振や胃もたれ、吐き気や嘔吐、腹鳴、下痢などを治す漢方薬です。みぞおちにつかえがある患者に向きます。また、これらの症状を伴う場合や精神不安を伴う口内炎に効果がある。半夏瀉心湯は、半夏、黄芩、黄連、乾姜、人参、大棗、甘草の7種類の生薬から構成されています。半夏が嘔気を抑え、黄芩・黄連は みぞおちの張りやつかえをとり、熱を冷まし炎症を緩和します。乾姜はお腹を温めて腹鳴、腹痛、下痢を止めます。人参は気を補い、大棗、甘草には健胃作用があります。 半夏瀉心湯適応の口内炎は、炎症や痛みの程度が比較的強いのが特徴です。そして、胸の煩悶感、精神不安、イライラ、不眠、口渇などの症状を良く伴います。また、舌の先端は紅色呈し、舌苔は薄く黄色です。
黄連湯は、半夏瀉心湯から、熱をさます黄芩をのぞき、温める作用をもつ桂皮を加えた漢方薬です。胃部の停滞感や重圧感、食欲不振がある急性胃炎や口内炎に有効です。また、腹部の冷え・腹痛が強いときにも適した処方です。一方二日酔いにもよく使われます。舌苔は、黄色または白色で、しばしば口臭を伴います。
茵蔯蒿湯は、茵蔯蒿、山梔子、大黄の3種類で構成され、これらの生薬はすべて熱を冷ます作用をもち、炎症性疾患に効果があります。また、大黄は便秘にも効果がある生薬です。茵蔯蒿湯は黄疸によく用いられるほか、蕁麻疹や口内炎にも効果があります。茵蔯蒿湯適応の口内炎は、灼熱感を伴う強い痛みを呈します。それに伴って、しばしば赤ら顔、のぼせ、口中の熱感、いらいら、便秘を伴います。また、舌は紅色を呈し、舌苔は厚く黄色です。
体内のバランスを調整する4種類の利水薬(猪苓、尺瀉、蒼朮、茯苓)に桂皮を加えた漢方薬です。桂皮は身体を温めて利水薬の効能を補佐します。五苓散は、水の代謝異常を改善し、無駄な水分は取り除き、身体全体での水分バランスをとります。水分の停滞によって引き起こされる口渇、尿量減少、浮腫、悪心、嘔吐、めまい、頭痛、二日酔い、下痢などに効果があります。たとえば飲酒の後で、水を多量に飲んでも口渇が改善しないことをよく経験しますが、この症状に対して五苓散は、組織間や消化器内に】多量に存在している水分を血管内に引き込み、余分な水分は尿として排出させ、身体全体の水分バランスを是正し、口渇を改善します。このとき、舌は湿潤で舌苔は厚く白色を呈することが多くあります。
熱を冷ます石膏、知母と胃を保護する粳米、甘草で構成されている白虎湯に滋養、滋潤作用をもつ人参が加えられた漢方薬です。発熱性炎症に脱水を伴った口渇、発汗を呈する場合に使われ、強力に消炎、解熱します。赤ら顔、目の充血、口中の熱感、口臭、口渇、便秘、舌質紅色、舌苔黄色などが使用目標です。シェーグレン症候群や糖尿病による口腔乾燥症、口内炎、三叉神経痛などに効果がある場合があります。
桔梗、枳実の排膿作用と芍薬、甘草の消炎作用を利用し、皮膚や口腔、咽喉の化膿性炎症で排膿が不十分な場合に使用します。口腔内では、歯肉に腫脹、疼痛があり、瘻孔や歯肉炎から膿汁が認められる場合などに有効です。また、急発に歯周炎や智歯周囲炎、切開排膿消炎措置後に抗菌薬と併用することで、治癒効果を促進します。
葛根湯というと、初期の風邪に服用するイメージがあると思います。葛根湯の効果は、「自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こり、上半身の神経痛」とあるように、感冒だけでなく、肩こりや神経痛にも有効です。桂枝湯(桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草)に葛根と麻黄を配合した葛根湯は、頸、肩、背部のこわばりが使用目標です。葛根は、血管収縮が強いために生じた筋肉のこわばりを緩和します。一方、麻黄には昇圧薬であるエフェドリンが含有されています。血圧上昇、気管支拡張などの作用があります。したがって、長期の葛根湯の使用は血圧上昇を引き起こす可能性があるため、高血圧症患者への処方や長期間の投与は注意が必要です。
芍薬甘草湯は、芍薬と甘草の2種類からなるシンプルな構成の漢方薬です。一般に、構成する生薬が少ないほど即効性が期待できます。芍薬、甘草いずれも平滑筋・骨格筋のけいれんを緩解して鎮痛する作用をもち、鎮痙、鎮痛剤として頓用されます。妊婦にも安全に使用できるので、妊婦のこむらがえりなどにも有効です。偽アルドステロン症(低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加など)やミオパチーを引き起こす原因となる甘草の配合量が多いため、これらの症状に注意することが必要です。
補中益気湯は、人参・黄耆を主体に柴胡・升麻を補助とした「是堤」を目的とする処方です。「是堤」とは、脳の興奮性を高め、平滑筋、骨格筋の緊張を増して、アトニー状態を改善することです。一般に、疲れやすい・元気がない・気力がない・立ちくらみ・筋力が弱いなどの症状に用います。起立性低血圧症などに有効です。また、ふだん元気があっても、ひどく疲れたときとか、非常に疲れることをする前(仕事・手術・放射線治療などの前)に服用すると即効性があります。比較的体力の低下した人、全身倦怠感、食欲不振などを訴える場合に用います。
十全大補湯は、四君子湯(桂皮、蒼朮、茯苓、甘草)と四物湯(地黄、芍薬、川芎、当帰)を合わせた八珍湯に、補気の人参と気耆を配合したもので、補気を主体としたうえで補血を行う配合になっています。桂皮は身体を温めると同時に、血行を促進して当帰・川芎の活血(血管拡張)の効能を助け、さらに消化呼吸を強める効果も担っています。わかりやすく言えば、胃腸の調子を整える四君子湯と、血行を促進する四物湯、さらに気力を補う人参、黄耆によって構成されている十全大補湯は、気力・体力を増進させる効能をもちます。したがって、病後、手術後、あるいは慢性疾患などで披露衰弱している場合に用いると有効です。
医歯薬出版 Q%A歯科のくすりがわかる本 参照